ビジネス書読もうぜ!

ビジネス書読もうぜ!

ビジネス書とりわけ企業本と呼ばれる本中心の感想。歴史に埋もれていった本を発見する手掛かりになればこれ幸い。

レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか

 

「翼を授ける」のキャッチフレーズでお馴染みレッドブルの企業本。
私はレッドブルを一度しか飲んだことがありません。エナジードリンクはどうしても無理をして働くときの飲み物としてのイメージが強く、価格も安いわけではないので、普段飲む飲料としての選択肢に入らなかったのです。ただ、人気があることも理解していて、あるときから普及しだしたこの商品がいかにして普及してきたのか知りたくて本書を手にとりました。

 

 

そもそもレッドブルオーストリアの企業だったことから初耳。てっきり米国の飲料だと思っていました。レッドブルの普及後に登場した競合製品の「モンスター」の方が米国発祥で、同じくエナジー飲料として棚に並ぶZONEがサントリーの商品であることを今更ながら知れたのは本書を読んだ影響と言えるでしょう(それまで意識してどこのメーカーなのか見ていなかった)。

 

 

本書は洋書の翻訳。そのため、聞き慣れない地名や人名が頻出し、なかなか読み進めにくい部分がありました。一方で、よくこれだけ調べ上げたなというほどレッドブルひいては創業者のマテシッツについて緻密に調べ上げられており、マテシッツが自身のことを調べ上げられるのを嫌っていることもあって、著者は最終的に出入り禁止などの憂き目にあったようです。ただ、本書が間違いだらけなら一笑に付されて終わりでしょうし、「大惨事」とまで言われているので、かなり正確な内容だったのでしょう。

 

 

レッドブルの経営哲学は全てがマーケティングであること。これに尽きます。メーカーのほとんど全てが看板となる製品を作り出して、それを広めることで成長したのに対し、レッドブルはあくまでタイの飲料をライセンス契約して製造を他社に委託し、マーケティングによってこれだけの企業に成長したことはマーケティングの無限の可能性を感じさせてくれます。しかし、成功が約束されたものでもなく、本書中に登場するレッドブルの事業でもほとんどの事業はレッドブルほどの成功には至りませんでした。レッドブルの成功から学べるものもありますが、再現性があるものではないと言えそうです。

 

 

スポーツに関心が低いのでスポーツビジネスについて知らなかったのですが、本書を読むとスポーツビジネスの影響力の大きさにも驚かされました。日本でもそれ相応の効果はあるとは思うものの、海外での熱狂や、広告効果はけた違いで、それをうまく利用したからこそ、レッドブルもこれだけのブランドに成長したと言えます。もっとも本書中で一番退屈したのもこの部分なので、やはり私とスポーツビジネスは相性が悪いと言えるのですが(笑)

 

 

創業者がメディア嫌いということもあり、類似書籍のない貴重な1冊となっています。製品自体の美味しさでなく、ストーリーによってブランドを構築し、成長を遂げた企業のあり方を知る上でも役立つ1冊でしょう。