ビジネス書読もうぜ!

ビジネス書読もうぜ!

ビジネス書とりわけ企業本と呼ばれる本中心の感想。歴史に埋もれていった本を発見する手掛かりになればこれ幸い。

クックパッド社員の名刺の秘密

 

クックパッドを題材に刊行されたビジネス書としては2番目に出版されたものとなります。

本書のタイトルにもなっている名刺にレシピを載せるという試みは面白い。クックパッドの名刺だと一目で分かりますし、興味を持った人には作ってもらえて、まさに料理ファーストの思考。遊び心とも言えますし、認知度を高める意味でも盲点を突いた有用なアイディアだと思います。基本的に泥臭く、料理を楽しむ工夫を広めていくのがクックパッドのあり方で、プラットフォーマーではありますが、画期的なビジネスモデルがあるわけでも、生き馬の目を抜くような工夫があるわけでもなく、終始そうした点が強みとして語られていました。

 

 

ただ、名刺以外は本書ならではという部分が少なかったというのが率直なところ。最初に刊行された上坂徹著「600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス」からも引用がされてるくらいで、クックパッドの良さを知りたいならそちらを読んだ方が良いように思われます。

加えて本書はページ数が非常に短い。本文そのものは100ページほどで、それ以降は名刺が掲載されているのみ。ページ数と価格のバランス的に損している感は否めません。

 

 

差別化要因としては名刺がカラーレシピ集代わりになっていること。クックパッドの解説ビジネス本としては評価低めになりますが、料理を楽しむというクックパッドのコンセプトの普及という意味では理解できる作りではあります。お家騒動で分裂することになる社長と会長について語られていることも、今読む意味と言えるでしょうか。

 

 

エピロードとして著書がレシピを見ながら料理を作って失敗した話が笑い話になっていますが、これがクックパッドのウィークポイントでもあったように思います。失敗も料理を楽しむ一要素に含まれると著者は感じたようですが、クックパッドのメイン層である主婦は、簡単に、失敗無く料理を作りたいわけです。レシピを見て作って失敗したでは駄目なんです。その後世間の流れがレシピサイトから料理動画サイトに追い抜かれていったのもこうしたレシピを参考にしても思うように作れないというのが大きかったように思います。

 

 

すでにクックパッドは凋落してしまいましたが、在りし日のクックパッドの凄さを知るためになら読む価値があると言えるかもしれません。ただし、その場合でも読む順番が本書が最初にならないのであれば読む価値は低いと言わざるをえない一冊でした。